第72回 勝兵塾月例会レポート

塾長・最高顧問 元谷 外志雄

塾長・最高顧問 元谷 外志雄

 勝兵塾第72回月例会が、5月18日(木)にアパグループ東京本社で開催されました。冒頭のアパグループ元谷外志雄代表による塾長挨拶では、「5月14日に北朝鮮が発射した火星12号は、高度2、000㎞に到達し、約700キロ離れたウラジオストック付近に落下したが、水平に発射すれば4、000㎞まで飛んだと言われている。高度2、000㎞に到達したことは、相当の耐熱技術が開発されたことを意味している。しかし、トランプ大統領は最近コメントを出していない。航空母艦ロナルド・レーガンが配備され、カール・ビンソンと二隻体制になったことは、攻撃の機運が高まってきたと言えるだろう。ロシアゲート事件で苦しい立場に追い込まれているトランプは、このままではニクソンのように弾劾される恐れがある。トランプは自らの危機をオフセットするために北朝鮮を攻撃するのではないか。先日のアメリカによるシリアへの攻撃は一石四鳥の効果があったが、北をやるなら今だろう。ある大臣に対して、『アメリカが北を攻撃したときに、しっかりコメントを出せるよう今から考えておくように』とアドバイスをした。書籍問題のお蔭でアパは世界で最も有名なホテルチェーンになったが、かつてこれほど保守が結束したことはなかった。安倍総理は憲法第九条に、第三項として自衛隊を合憲にする条項を加えるという『加憲』を表明したが、公明党にも配慮したうまい戦略である。任期が残り1年半であり、その間に改正の発議をしなければならない。本来なら自主憲法を制定するべきであるが、一回目の憲法改正は、できるところから着手すべきである。憲法学者の7割から違憲と言われながら、自衛隊は大きな負担を強いられていることから、自衛隊を合憲にするための改正なら国民の支持を得やすいだろう。」と、北朝鮮問題に対する分析や憲法改正に向けてのアイデアを披露されました。

衆議院議員の菅家一郎様

衆議院議員 菅家一郎様

 衆議院議員の菅家一郎様は、「私は福島県選出の国会議員である。放射性物質の測定単位には環境放射線量(μSV/h)と食料品中の放射線量(ベクレル/㎏)がある。6年前の3月11日に震災が起こり、3月17日には暫定基準として、年間5mSvと500ベクレルという基準が設定された。当時私は会津若松市の市長をしていたので、この基準に基づいて会津若松の全ての農産物について安全宣言を出したが、翌年の4月1日に新たな基準が設定され、被ばく線量の上限を年間5mSvから1mSvへ、食料品中の放射線量の基準値を500ベクレルから100ベクレルへ引き下げられた。そのため、食料品が基準値を超えたと報道され、風評被害を受けた。日本が100ベクレルという基準であるのに対して、コーデックスは1、000ベクレル、EUは1、250ベクレル、アメリカは1、200ベクレルであり、日本の基準が著しく厳しいことがわかる。福島県の全ての農産物は100ベクレル以下でなければ出荷できない。100ベクレルという基準は、流通する食料品の汚染割合を50%と仮定して設定されているが、日本の食糧自給率が50%程度なので、日本中の農産物は全て汚染されていることを想定したものだ。このように世界一の安全基準を満たしたものしか出荷していないのが福島県産の農産物である。また、環境放射線量について、南相馬市では0・11μSv、福島市で0・12μSvに対して、ニューヨークは0・046μSv、ロンドンは0・108μSv、ソウルは0・119μSvである。皆は福島の放射線を不安だと思っているが、科学的データを見れば全く問題ないことがわかる。今この会場で放射線量を測定すると0・08μSvである。会津若松の駅前で測っても0・08μSvだった。飛行機の中で測定すると3・4μSvであるが、パイロットやキャビンアテンダントの健康に全く問題はない。現在の基準値が科学的根拠の良くわからないものであり、放射線量が全くゼロということはない。福島は科学的データを見れば全く問題ない。」と、放射線量に関する日本の基準の厳しさを紹介され、科学的データの必要性を訴えられました。

衆議院議員の田畑裕明様

衆議院議員 田畑裕明様

 衆議院議員の田畑裕明様は、「野党は理不尽な批判をしているが、テロ等準備罪は総監視社会を目指したものでも、内心の自由を奪うものでもない。テロに対して国際的な取り組み姿勢を示すものである。明日から法務委員会で審議され、今国会中に成立する。」「アメリカのハリス司令官は16日に安倍総理と会談したが、その後の講演の中で、『核兵器を開発しても弾道ミサイル技術を強化しても意味がないことを認識させる必要がある。北朝鮮を正気に戻す、目を覚まさせることが大事だ。これはひざまずかせることが目的ではない。』と話した。アメリカは最新の装備を日本近海に導入している。今後米軍と自衛隊の相互運用性を高めていくことで抑止力を高めていく。」「憲法改正は憲法審査会で議論されているが、野党が政局化させて議論が噛み合っていない。国民の皆様に誤ったメッセージが伝わらないよう、丁寧に説明していく必要がある。」「こども保険は少子化対策の一つであるが、年金や医療、介護には社会保険があるが子育てに社会保険がないことから、公費を投入して子どもが必要な保育・教育等を受けられないリスクを社会全体で支えようというものである。保険料を0・1%にすれば3、400億円の財源規模となる。」と、現在の重要な政治上の課題について触れられました。

参議院議員の滝波宏文様

参議院議員 滝波宏文様

 参議院議員の滝波宏文様は、「約20年間は財務省で仕事をしていた。そのときからの大きなテーマは、ポピュリズムの政策はだめだということだ。金融危機における公的資金の投入は、1990年代に住専問題で6、850億円の公的資金を投入し、これが不人気な政策であったため、それ以降実施されず、97年に拓銀が破綻した。アメリカのサマーズは、銀行を一つも潰さないのはおかしいと言い、日本もメディアもなぜ銀行を潰さないのかと報じたが、長銀や日債銀を強制的に国有化して潰した結果、マーケットの底で破綻させ、数兆円の公費を投入して10億円で外資に売却したのである。アメリカは、リーマンショックの翌日にはAIGに9兆円の公的資金を投入し、その後アメリカ経済はV字回復した。このときは、バーナンキやガイトナーといった日本を研究してきた人々がアメリカ経済を救ったのである。これが金融危機において正しい政策なのである。現在経済産業委員会でエネルギー政策に取り組んでいるが、原子力は人気のない政策である。しかし、原発が担っていた30%の電力は今火力に依存しており、原油は中東に依存している。東電を潰せという声が大きいが、東電を潰せば誰が福島に賠償するのか。水俣病でチッソは、賠償のために存続したのである。また、賠償金を新電力に負担させるのはおかしいという意見も多いが、東電管轄の人々はこれまで福島にリスクを負わせて安価な電力を使ってきたのであり、それらの人々が東電から新電力に乗り換えたのなら、そこで賠償金を負担すべきではないか。安倍総理は日本の課題に対して逃げることなく向き合っている。テロ等準備罪についても、メディアは人権侵害だと言っているが、早く成立させ、北朝鮮でさえも加盟しているTOC条約を日本が批准しなければならない。テロ等準備罪は共謀罪と言われているが、事実は全く違う。ポピュリズムに流されずに日本の課題に取り組んでいきたい。」と、ポピュリズムに流されない政策への取り組みについて語られました。

慶應義塾大学経済学部教授の塩澤修平様

慶應義塾大学経済学部教授 塩澤修平様

 慶應義塾大学経済学部教授の塩澤修平様は、「資料に『こども保険を導入すれば、医療介護の改革をより加速するインセンティブとなる』と書かれているが、こども保険の導入がどのようにして医療介護の改革につながるのか」と質問され、田畑様は「子育てを社会で支えていくことから健康に対するマインドを変えていくことを狙っている。健康に対する意識を高めることで医療費の高騰を抑えていく。ただし、年金支給開始を遅らせることを議論しているわけではない。」と答えらえました。

新しい歴史教科書をつくる会副会長の岡野俊昭様

新しい歴史教科書をつくる会副会長 岡野俊昭様

 新しい歴史教科書をつくる会副会長の岡野俊昭様は、「私は福島安全宣言の会の会長をしているが、放射性物質による風評被害はマスコミの反日日本人による報道に大きな問題があり、ここにメスを入れなければ空論に終わってしまうのでないか。」と質問され、菅家様は、「子供達がいじめを受けるのは、いじめる子供の親が福島に偏見を持っているからである。国民に対して正しい情報、科学的データを示していく必要がある。また、テロ等準備罪についてもマスコミが正しく伝えないという問題がある。真実を伝えていくためにも戦っていかなければならない。」と答えられました。

在日本ルーマニア商工会議所会頭の酒生文弥様

在日本ルーマニア商工会議所会頭 酒生文弥様

 在日本ルーマニア商工会議所会頭の酒生文弥様は、「先日、日本酒を世界に広めたいという若者が私を訪ねてきたが、日本酒を世界に広めていくためにどのような取り組みをすればよいか。」と質問され、菅家様は、「日本酒や日本食を世界に広めていくために、外務省では『ジャパン・ハウス』に戦略的に取り組んでいる。日本の文化や伝統、食をPRするための拠点を、まずはアメリカのロサンゼルスなどに開設する。これを活用する方法もある。また、酒蔵組合で企画をして海外に売り込んでいく方法もある。」と答えられました。

新しい歴史教科書をつくる会前会長の杉原誠四郎様

新しい歴史教科書をつくる会前会長 杉原誠四郎様

 新しい歴史教科書をつくる会前会長の杉原誠四郎様は、「日本の占領期の教育改革を研究したが、他国による改革の中で、日本は最も成功した事例である。それはアメリカが用意周到で、かつ人道的な要素があったからである。北朝鮮の非核化において、改革の主体は韓国である。同一文化、同一民族であるので、成功する確率は高い。アメリカにとっては、もうすぐ北のミサイルがアメリカに届く状況であり、今が最後のチャンスである。金正恩は自分の命と体制を守るために核武装が必要だという信念を持っており、厳しいチキンレースをしている。中国もロシアも北の核開発を望んではいないから、アメリカに同調するだろう。北に対しては、アメリカが体制と命を保証すると言って圧力をかけても信用しないが、国連安保理で保証すれば信用するだろう。そのうえで査察を入れる。それを実現させるためには、中国が国境を封鎖するなどの徹底した圧力が必要である。朝鮮には120万人の軍隊がいるが、金正恩に忠誠心を持っているとは言えない。大量に降伏してくるはずだ。そこで降伏してきた軍隊に対しては命の保証をして、軍隊を解散させず、改革の手段として活用する。そうすれば難民を出さず混乱なく改革できる。改革後はアメリカ軍や韓国軍は引き上げて北を非武装地帯にすれば軍事的に均衡するだろう。これで北朝鮮の非核化が実現できる。」と、北朝鮮の非核化に向けた持論を展開されました。

 杉原様の見解に対して塾長は、「北朝鮮の問題は日本にとって何が良いのかという点から考えなければならない。北朝鮮は不都合な存在だが地域の緩衝エリアであり、北の保有する核はアメリカに向けたものではなく、中国に向けたものである。龍川駅で起こった列車爆破事件は、核開発を諦めない金正日の命を中国が狙ったものであり、この事件をきっかけに北は中国に対抗するために核を持とうと考えるようになった。その証拠に、金正恩は叔父をはじめ、親中派を粛清した。アメリカは北の核そのものは恐れていないが、核を搭載した弾道弾ミサイルがアメリカに届くことを恐れている。だから、アメリカは弾道弾ミサイルの開発を止めさせるために、北に対して限定的な攻撃をするだろう。それでもし北がソウルや日本に向けて反撃すれば、北そのものが壊滅することになる。だから、海上の北方限界線への反撃に留めるだろう。トランプは再選に向けての戦略として、この機会を利用するはずだが、金正恩体制の存続を望んでいる。ただし、北の核がテロリストに渡ったら脅威である。したがって、使わない、他に移転させないという条件の下で、北による核の保有を認めるのではないか。全面戦争は誰も望んでいない。日本にとっては北が韓国と一体とならないことが望ましいのである。」と、異なる切り口からの見解を示されました。

ノーネスチャンネル「Global Inside」メインキャスターの松本道弘様

ノーネスチャンネル「Global Inside」メインキャスター 松本道弘様

 ノーネスチャンネル「Global Inside」メインキャスターの松本道弘様は、「議論は日本人の好きなゲームである。『朝まで生テレビ』はその最たるもので、噛み合わないところが日本人の美学である。日本の討論は一方的で相手の言うことは聞かない。国会討論もそうである。日本人は一方的に話すのは好きだが、質問を受けることが嫌いである。」「アメリカの宣教師は、日本人はクリスチャンでないから英語ができないと言っていた。こうしたことを言われて黙っていると、相手は議論に勝ったと思う。新渡戸稲造は、日本をキリスト教化しようとする欧米に反発して、『武士道』を書いた。キリスト教は理想論を上からの目線で説くから皆が黙ってしまう。一方、ディベートとは対等なものである。1940年10月のルーズベルトのスピーチでは繰り返し戦争をしないと言ったが、戦争に勝つためにチャーチルが日本を巻き込もうとした。このことに野村大使は気付いていなかった。当時のアメリカ人の90%は戦争に反対していた。一神教はハルマゲドンの世界観である。日本の神道でなければ世界に平和は来ない。神国としての自負を持って建設的な議論をしたい。」と、建設的な議論の重要性を説かれました。

 この他、衆議院議員・消費者問題特別委員長の原田義昭様にも、ご出席いただきました。

 

 最後に塾長は、「こども保険の話に関連して、年金、医療、介護を含め、少子高齢化の中で社会保障が問題となっているが、そもそもどうしてこうなったのか。日本には、かつて大家族制度があり、家督制度があって、老人も子供も家族で面倒を見て、知恵の伝承をしてきた。誰がこの大家族を分断したのか。私は以前から税の優遇で三世代、四世代が同居できるよう誘導すべきだと主張してきた。今は地方の学生も僅かの偏差値の違いで大都市の大学に進学し、就職する。4人家族が4カ所で暮らすことすらある。これらを全て保険で賄おうとすると、全体が破綻してしまう。家族の中で温もりのある生活ができることが幸せである。日本の強さの源泉が大家族制度にあると見たアメリカは、日本に個人主義を取り入れて分断した。ドイツは東西に分断された悲哀があったが、何度も憲法を改正してきている。一方、日本は国の分断を免れたが、今まで憲法を改正することができなかった。また日本は分断されなかったと思われているが、戦後敗戦利得者と国民との間で分断されていた。サンフランシスコ講和条約によってプレスコードは失効したとされているが、占領期の言論統制を担った検閲官が独立回復後に売国奴と非難されないよう、朝日を中心に未だに自主規制という形で守り続けている。『【増補版】理論近現代史学』の巻頭には3枚の写真を掲載している。張作霖爆殺事件の爆破された列車の写真、日本軍が南京を攻略した際に撮影された漢奸狩りのポスターの写真、ソウル日報に掲載された慰安婦を月300円(現在の約300万円に相当)で募集する広告の写真である。当初扶桑社は写真の巻頭への掲載に難色を示したが、私が、『掲載しなければ自費出版をする』と言って、ようやく掲載に漕ぎ着けた。私は理論的にあり得る話かあり得ない話かを検証する理論近現代史学を提唱しているが、これまで本当のことをはっきり言えなかったのは、メディアの責任である。メディアを規制する法律を作り、メディアが誤ったことを広めることに対して罰則を設ける必要がある。戦後日本は全てが平等であることで、悪平等社会になった。戦争に負けたがゆえにアメリカの悪しき慣習が入ってきた。安倍総理には、第一回目の憲法改正を実現してもらいたい。」と、家族の分断が社会保障問題の原因であることやプレスコードが未だに自主規制として残っていることを指摘されて、会を締め括られました。